community development

地域での話し合い・決め事を円滑に進めるためにはどうすればいいのか?

地域での会議の場では、地域のドン的な方の意見が強かったり、例年通りやればいいといった事が多く、なかなか円滑で有意義な話し合いが出来ていないのが現状です。
『全米一住みたいまち』として注目されているポートランドでは、まちづくりの方針(街の決め事)を決める際は、初期の段階から市民参加型の会議やミーティング、ワークショップを開催し、そこに若者からお年寄りまで参加して皆で意見を言い合います。
日本の場合は、行政と建設会社が計画の大半をつくり、最後に市民に対して、市民説明会という形で意見を聞くスタイルが多い。『一応、聞いておきますよ、聞く気ないけど』という印象のものが多いです。
この場合、もう既にやる方向が決まっているので、たとえ意見を言ったところで、聞いてもらえないことが大半です。その結果として、行政と市民との壁が出来てしまいます。このような状態で、よい街が出来るはずがありません。
ポートランドでは、住民と行政が平等な立場であり、計画を計画する段階では、住民、行政、経済団体、大学等の公共機関、事業者の4者のそれぞれの利害関係を整理して検討し合う。

現在日本各地で、このポートランド式デザインワークショップを実際に開催し、まちの利活用について話し合いが行われている。
以下では、ワークショップの手順について紹介します。

ポートランドの再生計画プロセス
①再生地区を決定する
 住民の平均収入、固定資産税収の変化、失業率、商業建物の空き家率
②2つの委員会を組織する
 ・利害関係者の会
  地域住民 地域事業者 経済団体 商店街組合 大学 NPO 医療機関等
 ・専門家委員会
  行政部局(交通、公園、水道、開発、住宅、警察、消防等)
③計画の策定
インターネット調査、数回のデザインワークショップの中で、開発目標、方向性、長期総合計画・指針との関係性を説明し、再開発に対するアイディアや課題を募る。

デザインワークショップ
ワークショップには、市民、地域の事業者、公共機関、行政の4者の利害関係者が揃い、
議論をまとめるファシリテーター(主に都市計画の専門家や建築家、プロのファシリテーター)がディスカッションをオペレーションする。
参加人数については、事業規模や地域によって異なるが、毎回2、30人の参加を見込む。
【1回目】次の5つの主題についてディスカッションをおこなう。
① 住民や市域利用者が必要とするコミュニティーサービスやアメニティ
② 交通機関、自転車などの輸送主題
③ 土地利用
④ 地区の特徴をどう活かすか
⑤ 省エネ、環境改善を図る為の地区規模のシステム

【2回目】
グループごとに議論した内容を他グループと共有し、それらのアイディアの長所・短所・可能性や課題を分析し、デザイン基準をまとめる。
→開発コンセプトとして仕上げられ、ウェブサイトやオープンハウスなどのイベントを通じて、より多くの地域住民と共有され、さらに意見を集めて開発計画の草案が出来上がる。
【3~5回目】
特筆すべきアイディアと開発コンセプトをさらに詰め、そのコンセプトについて参加者にアンケートをとり、利害関係者やコミュニティのメンバーの意見を聞き取る。
さらに、各アイディアの政治的、財政的な実現可能性と、実現した場合のコミュニティへの影響をもとに優先順位をつける。
この結果、上位に残ったアイディアがこの地域の主要プロジェクトになる。
将来必要となる協力可能なパートナーの役割を明確にするとともに、どうすれば主要プロジェクトを成功に導けるかについて話す。
その後、予算や工程管理表などの詳細を仕上げ、地区再生開発計画書が完成し、行政機関へ提出される。

《事例》20年後の街を描くデザインワークショップ

(1)対象エリア ポートランド中心部の長期年計画
(2)目標年度  2041年
(3)参加者等  都市計画局の職員、地権者、地域住民  
         18か月で約2200人が参加
(4)提案コンセプト 『グリーンループ』
         ウィラメット川で、物理的にも心理的にも分離されている対岸地域をつなぐ
(5)主要な目的 ①健康の向上 ②公園をつなぐ ③ビジネスの支援 ④トレイルの増加 ⑤自転車利用の奨励 ⑥サスティナブルなインフラと環境建設の推進
【専用キッド】拡大航空図、トレーシングペーパー、マーカー、ポストイット
(参考文献)「ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる」 山崎 満広